収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2022年5月17日

今日という記念日をどう綴ろう。 きっと今回の収監期間において今日は最も思い出深い一日になることは間違いない。 出来事をそのままに記載することにする。気持ちは…まあ後からでいいや。 いつものように朝起きた。 いつものように工場に出役した。 いつも…

2022年5月16日

とても親切にしてくれる人が背中にがっつりとカラフルな仏様を背負っているのを見て自分の気持ちに整理がつかない。ちょっとした所作、ただくつろいで座っているだけにしてもその姿に凄みを感じる。凄みを与えようと生きてきた者特有の威圧である。ボクと彼…

2022年5月15日

のっぺりとした白い壁。剥落するたびに塗り直されている。それも厚塗り。どんどんと分厚くなっていくこの部屋の壁。どんどんと狭くなっていくこの部屋。独房の減価償却は体積で測れるはず。 トイレの詰まりがひとまずおさまった。便臭が消える。幻臭だったん…

2022年5月14日

昨日手をつけれなかった矯正指導日の提出物をさくっと仕上げる。 「生きる知恵・生きる知識」は、ビートきよしのインタビューだった。このインタビュー…数年前に府中刑務所にいた時に聞いた記憶がある。がんばればどうにかなるという根性論。がんばってどう…

2022年5月13日

強制…もとい矯正指導日。 強制でも矯正でもさして変わるもんでもないだろうが。 部屋で教育のビデオを見ていたら、「診察」と言って呼び出される。外医への受診らしい。 準備された紺色のウインドブレーカー、サンダルへ着替える。 ドアップ、バストアアップ…

2022年5月12日

いつものように訓練工場へ出役する。 運動が終わり、それぞれ食堂へ呼び出され、配役先が申し渡される。 最後に訓練担当がボクに言ってくれたのはこんな言葉だった。 「毎日いろんなやつを見てるとやり直しがききそうなやつとそうでないやつとは大体わかるよ…

2022年5月11日

訓練も最終日。 今日は集大成ともいえる配役審査会だ。 配役審査会と名付けられているが、ボクらに配役する以外の選択肢などなく(しかも、どこの工場に割り振られるかもすでに決まっているはずだ)、とりあえず刑務所的通過儀礼なのであろう。 そこそこの立…

2022年5月10日

朝イチの運動。グランドをぐるぐるを歩きながらアキラとの会話。 「ここにいるとムラムラしないよね」とボクが言う。 「いやー、年代が違いますからね。ムラつくときもありますよ」と返してくるのはアキラ二十代。 きっぱりと線を引かれる。失礼しました。 …

2022年5月9日

訓練も今日を含めてあと三日。 午前中は教誨師でもある住職による坐禅のマイクロティーチング。 意外にもよかった。やったあと体がぽかぽかした。 頭に浮かんだ想念をことごとく捨てて無になる。無我を目指す。 ボクには捨てるほどの財はない。 ボクを生かす…

2022年5月8日

朝の頭が爽やかなうちに「これからのステップ」(訓練期間のワークブック)を仕上げよう。 設問 無力に対して降参することが自由への道です。あなたは、まともではない状態、不安、自尊心の喪失、活力の喪失から自分を解放することができるのです。あなたの…

2022年5月7日

朝起き「また今日も休みかあ」と思える贅沢。 空はぐずついている。ボクの鼻もじゅるじゅるいっている。 訓練生用のワークブックを仕上げようと、机に座る。とたんに土曜の邪念がわく。 前に進め!…ボクはどこに向かっているのだろう。 気をつけ、礼!…ボク…

2022年5月6日

ボクは一人が好きだ。だけど誰かといるのも好きだ。特に育ちが悪く、頭が悪く、精神が不健全、そういう札付き的なムードに魅かれる自分がいる。彼らが集まることで醸し出される空気の匂いというか、色のようなものがいつでもボクにまとわりついてくる。そし…

2022年5月5日

目が覚める。窓の外は闇。そこにあるはずの体育館のシルエットはまだ見えない。 朝日が出るまでは読書はできないので大人しく目を瞑る。きっとまだ四時くらいだろう。すでに8時間は寝ているが、それでも二度寝ができてしまう。眠るために人は起きてるのかも…

2022年5月4日

刑務所における祝日。それはすなわちおやつの日。 今日はクリームオー(オレオのジェネリック)。個包装であるが、箱を開けるとチョコの香りがふわあっと広がる。 朝日とともに目覚め、夕日とともに休む。規則正しい生活スタイルの継続。これが罰になるって…

2022年5月3日

お待たせしました。 手紙を出す相手がいる。ただそれだけの現実を「ボクのことを持ってる」という妄想にまで展開できるのはボクの強みでありまして、なので村崎さんが待ち侘びている姿を想像しながらペンをとっています。 ネタを探し、言葉を紡ぎ、したため…

2022年5月2日

「今」につながる「過去」を見て「未来」を予測する。 「今」の不幸の責任は「過去」の自分にある。 「過去」の自分を貶める「今」の境遇。 「過去」の自分にとってみればこんなのただの巻き添えだよなあ。 ごめんね、「過去」の自分。 いやいや、そんな憐憫…

2022年5月1日

前略 まずはご報告を。えーっと判決は懲役一年8ヶ月でした。 これはというと、求刑2年半に対して七掛け以下の量刑なので(判決の多くが求刑の七〜八掛けになるのが一般的であり)、まあよかった方だと評価できます。 とは言っても一年八ヶ月。つまりは二十…

2022年4月30日

珍しく薬の夢をみる。 引越しの準備をしていたら、業者のお兄さんがやってきて「一緒にキメセクやろうよ」と誘ってきた… 新井薬師の街を散歩していたら一軒屋のドアが突然あいて顔を見せた男が「乱交やるけどどう?」と声をかけられた… デイビゴを飲むと悪夢…

2022年4月29日

今年度の二期生がやってくる。 一週間前に自分たちが教えられたことを全く同じように指導されている様子を横目に見ながら(一期生と二期生は工場の真ん中で区分けられている)、堅強な刑務所のシステムが出来上がっていくプロセスになるほどなとうんうん頷く…

2022年4月28日

1.薬物の危険性や害悪を理解し、薬物使用を断ち切る決意を固める。 2.主体性や責任感を養い、自律的に行動する力を身につける。 3.社会復帰後の就労方針を明確にし、生活設計を具体化する。 この三行が印刷された紙が配られた。ノートに写して置くように…

2022年4月27日

午前中に講義が三つ。所内の職員による「受刑者の手引き」の説明と保護司の役目の話、あとは技官の体験談。 彼らは決して敵ではないんだけれど、具体的に救ってくれるかといえばそうではない。傍観者的味方の距離感。 そんな中でも技官の話は良かった。事故…

2022年4月26日

ご無沙汰しています。 いかがお過ごしですか。 お聞きになってるでしょうが、東拘から移送され今は水戸刑務所にいます。 「翔んで埼玉」、もとい「ぶっ翔んで茨城」です。 夕食に納豆が出ます。 本場の豆です。うまいです。粘りが違います。 にしても寒いで…

2022年4月25日

出役し、工場前で官本を返却する。 着替えをして工場に並ぶ。ラジオ体操が終わったら再度整列し、自分の席へと移動する。 訓練工場の運動は朝一番に割り当てられている。作業前に運動場に移動する。 久しぶりの土の感触。虫、砂、草、花…昨夜の雨がきらきら…

2022年4月24日

よどんだ舎房の空気が食器口を通り、窓の外へと逃げるように抜けていく。 布団をたたむ。端を畳の日焼けしていない青い部分にきちんと揃えて。 味噌汁に秋刀魚の缶詰に麦飯。朝食後薬も忘れていない。それから読書。朝っぱらから村上龍。 シャバの日曜の午前…

2022年4月23日

土曜の昼下がり。 週明けまでに、「遵守事項46項目」を全部書き写すという課題を半日かけてやる。 書き写させることで、ルールを知らなかったとは言わせなくさせるんだろう。つまりは、説明する時間の省エネ化。 規律が個性を隠す。刑務官も受刑者も。個のな…

2022年4月22日

朝方、起きては寝。起きては寝を繰り返す。 夢の中でも訓練を受けている。 「オマエダケオソイ」という訓練担当の怒鳴り声で夢の世界から追い出される。 躾と虐待。しごきと指導。境は曖昧だ。被虐待児や体罰経験者がど根性スピリッツの持ち主になるわけでは…

2022年4月21日

こんな夢を見た。 親子の猫と散歩をしている。はしゃいで飛び出した子猫が車に轢かれてしまう。茶トラの小さな毛だまりが道路脇でモゾモゾと動いている。血も臓器もないただふわふわした毛の塊がモゾモゾしている。親猫が鼻先で匂うようにその物体に触れると…