2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧
朝の出役が大幅に遅れている。なかなか号令がかからない。 ようやく整列する。雑居で誰かが誰かを殴ったらしい。タツヤくんが耳打ちして教えてくれる。 同じ独居なのに彼はいつもどこからこういう情報をつかんでくるのだろう。わからない。監獄は不思議な場…
雨上がりのグランドの芝生は踏みごたえがあって気持ちいい。踏まれてもすぐにすくっと立ち直る。足跡を残さないしなやかさ。ボクは打たれ強いものが好きなのだ。 日用品で700円の石鹸を購入する。班長のタツヤくんに「淘汰さんセレブっすね」とからかわれる…
雷で目が覚めた。強烈な光。 ボクは目を閉じていたが腥いピンクと赤の世界が見えた。目を開けていないのに見えるってのもおかしな話ではあるが…毛細血管が透けて瞼に映っただけなんだろう。ハムスターが蠢いているイメージだった。 次の瞬間、音が来た。 敷…
一人でいることが平気であるとみなされた者は迫害の対象にならない。 そしてその覚悟を持った者は「一人きりだ」とさみしさに折り合う必要もなくなり、そのうち誰とも折り合わなくなる。孤高の人となり、みるみる社会性が失われていく。 仕事も学校も試験も…
昼休み、官本を見ていたら担当台から若目のオヤジがやってきて「おい!お前、今日は借りる日じゃねーぞ」と牽制してくる。 「はい」と素直に返事をするも「勝手に持ってくんじゃねーぞ」と感じの悪い念押し。 なんでこんな誰もハッピーにならない言葉を使う…
きっかけなんてない。 それは乾いたサバンナに突然燃え広がる炎のようだった。 爆ぜる空気。 皆が獣に豹変す。 「なんだよあいつ」 「10工行け」 「死ねばいい」 食堂での昼食中、ホンダさんに向けて呟かれる悪意たち。 死ねという言葉を使うことへのハード…
お手紙、本の差し入れありがとうございます。 ハウジングファースト三部作さっそく読みました。 思ったこと感じたことを綴ります。 現在の住まいをめぐる惨状は社会の変革に追いつけない国や行政のテンポの遅さ、やる気のなさが原因なんだと思ってましたが、…
出所に向けてのアンケートが配られる。いつの話とわからないのになあ。 とりあえず、つくろい東京ファンドのシェルターと書かせてもらった。 場所によって人は変わる。ここではボクはとても人当たりよく(というかほとんど一人で)、寡黙に過ごしている。誰…
日用品の支給は第4月曜ではなく最終月曜だったという誤算。 青のボールペンも切れてしまったし、石鹸はもうかけらしかない。 猛暑で屋外運動が流れに流れ…今月初めてのグランド。 うだる暑さは相変わらずだが、きっと気づかないだけで少しずつ季節は翳ってき…