収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年4月25日

出役し、工場前で官本を返却する。

着替えをして工場に並ぶ。ラジオ体操が終わったら再度整列し、自分の席へと移動する。

訓練工場の運動は朝一番に割り当てられている。作業前に運動場に移動する。

久しぶりの土の感触。虫、砂、草、花…昨夜の雨がきらきらと太陽に照らされて光る。

どうして刑務所の運動場から見上げる空はいつもこんなに広いんだろう。

グランドを歩きながらの会話。みな一癖ある精悍な面構えだが、話すと優しい。

いつものことであるが年齢を言うと「えっ?」と周りがどよめく。年の割になまっちろい顔つきなんだろう。修羅場の少ない人生でした。「いい薬使ってきたんで」と話を逸らすも、こういう場面はあまり居心地良くはない。

誰かが「水戸刑は楽だよ」と言う。事実であるかはわからないが、とにかくラッキーだと自分を励ます。

30分の運動時間が終わり工場へ戻る。

午前は法務教官による講義とお寺の住職による講話と教育課長による講義。昼食を挟んで午後も講義、講義、講義…。マスク、フェイスシールド、ビニールの暖簾、アクリル板の衝立…障害物が多すぎて何を言ってるのか聞き取りにくい。

所内の決まりごとについてなど細々と説明してもらったが、訓練担当の「納得いかないルールもあるかもしれないが、どれもこれもすべては刑務所だからだ。嫌だったら来るな」という言葉が一番シンプルな理屈に思えた。

作業は合間にちらっとやる程度。今日も終わるかというころに諸動作の訓練が始まった。

右にならえ(左にならえ)すらうまく出来なくて大汗をかく。訓練担当は「動作訓練は、意欲やる気だ!みんなつらい、がんばれ」と叱咤を浴びせてくる。ボクはきついのも辛いのも頑張るのも全然カモンオーライなんだけど……でもとにかく出来ないのだ。

巻き舌の怒鳴り声。迫力があるけど、普通の直線的な怒鳴りの方が体にはダイレクトに響く。

大声に脳みそが殴られ続けげっそりししきった体を入浴で回復させ、今日を終える。

 

f:id:cubu:20231007205100j:image

水木しげる/劇画ヒットラー

ヒットラーは軍隊生活が好きで好きでたまらなかったらしい。こういう特殊性癖だったら懲役も苦ではなかったろうに。