収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年5月17日

今日という記念日をどう綴ろう。

きっと今回の収監期間において今日は最も思い出深い一日になることは間違いない。

出来事をそのままに記載することにする。気持ちは…まあ後からでいいや。

いつものように朝起きた。

いつものように工場に出役した。

いつものように作業に勤しんだ。

いつものように運動に参加した。

そしてことは起きた。

グランドでリレーに参加した。工場のみんなとのメンバーシップをはかるため断るという選択肢はなかった。まあボクは足は早い方だから輪を乱すような走りをすることはないだろうという自負もあったし。

2レース目のスタートダッシュで左足が動かなくなる。音もなく痛みもなく、ただまともでないことが起こったことだけはわかった。やっちまった感覚。片足立ちでその場から動けない。同囚に背負われてベンチまで移動する。刑務医官が呼び出される。車椅子に乗せられる。医務室へ運ばれる。アキレス腱断裂の診断。一棟一階8号室へ転房となる。部屋ではことの顛末を記した所長宛の自認書の作成を命ぜられる。いつどこで何をしていてどういう風に…そこには、暴行などではなくあくまで自己の不注意によって引き起こされた事態であり今後気をつける旨の文句も携えて。

専門医の診察が必要との判断で県立病院へ。先日行ったばかりなのだか今回は整形外科へ。4人の刑務官に付き添われてドナドナドーナードーナー🎵今回はイミテーション車椅子でなくて本気のケアモード。試しに左足を地面につけてみたら激痛。生きてるって感じ。

無事故工場に傷をつけて優良待遇が取り消されたら申し訳ない…

工場担当の出世に影響したら申し訳ない…

こんならしくない利他的感情は訓練の成果なのだろうか。

外来ですぐにレントゲン検査。バッチリ切れていた。なんも言えねえ。ストレッチャーに横になり左足がギブスに包まれていく。ビルドインのエアコンを眺めるとHITACHIだった。やっぱり茨城なんだなあと思う。足よりも横腹に突き刺さる手錠が痛い。

「全治三ヶ月です。来週もギブスの付け替えに来てください。お大事に」

40分かけて刑務所へ戻る。

松葉杖を二本貸与してもらう。地に足はつかない。

部屋に戻ればリタイヤの証明のように工場に持って行ってあった舎房着や運動靴が戻されてある。ボクは刑務所に入ると病舎に行くようにできているんだろうなあ。

陣中見舞いのようにえらい立場の人たちが様子を見に来る。ボクは「すみません」「すみません」と平謝りを繰り返す。

夕食後、ようやく一息ついてその時のことを思い出す。腱が切れる音したっけなあ。みんなの歓声で聞こえなかったよなあ。

明日から寝たきりかあ。

面白おかしく手紙に書けるかなあ。

 

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今日は読書どころじゃない