収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年4月22日

朝方、起きては寝。起きては寝を繰り返す。

夢の中でも訓練を受けている。

「オマエダケオソイ」という訓練担当の怒鳴り声で夢の世界から追い出される。

躾と虐待。しごきと指導。境は曖昧だ。被虐待児や体罰経験者がど根性スピリッツの持ち主になるわけではない。課せられた環境を糧にするかトラウマにするかは自分次第。

留置所、裁判所、拘置所を経て、刑務所についた頃には基本的人権なんてほとんど残されていない。

だからってボクはここでの時間で何かを損ないたくはないし、かといって何かを得たいとも思わない。

 

新しい部屋は一階なのに日差しが明るい。窓に目張りがないせいだ。

畳も新しい。そしてテレビもついている。

どうせテレビなんて見ないだろうと思っていたがさっそく矯正指導日のビデオ学習でスイッチオン。

流れるのは、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」とテレビ東京の「ガイアの夜明け」。テレビ番組を1時間以上みっちり見るのなんていつ以来だろう。感想文の提出課題があるのでプロフェッショナルの田中みな美について書く。

「求められることに自由を覚える」という彼女の発言に違和感を感じた。他者からの目から解放されてこその自由だろうとボクは思うから。一体この人は何がしたいんだろう。女優目指したいってことでもなさそうだしなあ。芸能界人でいたい人なんだろうなあ。まあ確固たる人生観なんて持ってる人の方が少ないだろうし、人生なんてそんなもんなんだろう。最後の「は〜〜」って溢れたため息が一番様になっていた。

は〜〜感想文めんどくせえ。

刑務所の理屈にあわせた言葉を選ばなくてはならない。無理してるので疲れる。達成感のない疲れは消耗でしかない。

 

部屋のテレビが遠隔操作で勝手についたり消えたりする。消灯後に突然ついたりもする。気味が悪い。

 

 

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篠田節子/女たちのジハード

読み終わってから、いつの話なんだろうと初版をチェックしたら1997年とあった。自分が学生時代の頃の話だった。

どうりで古い…いやいや世間の価値は何も変わっていない。

表層と本音の乖離は現代の方がはっきりと分裂してしまっているように思える。