収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年5月16日

とても親切にしてくれる人が背中にがっつりとカラフルな仏様を背負っているのを見て自分の気持ちに整理がつかない。ちょっとした所作、ただくつろいで座っているだけにしてもその姿に凄みを感じる。凄みを与えようと生きてきた者特有の威圧である。ボクと彼と何も違わないという思いと、もしかしたら決定的に違っているんじゃないかという思いがないまぜになる。

信頼関係を絶やさないためにも自分が被害者になるような事態はさけなければならない。

 

今日の運動時間は体育館。スクワットをグループで50回の7セット。もうふくらはぎが限界だ。

部屋に帰って点検までの10分程度。坐禅を組む。煩悩も雑念も作業中に出尽くしてるから無へのアクセスもたやすい。

 

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ユーゴーレ・ミゼラブル

一冊600ページを超える全4巻の超長編大作。こんな機会でもなければ読むこともないだろうとチャレンジしてみることにした。

一片のパンを盗み19年の牢獄生活を強いられることになった男の物語。

実証的にみて刑罰は犯罪の抑止になっていないことが多く、上手な制度設計さえあれば民法を媒介とする人々の契約のみで犯罪の少ない成熟した社会が実現できるという刑法不要説を主張する過激派リバタリアンに強くシンパしてしまうボクの思考の傾向は自身の懲役体験によるものが大きい。だから主人公ジャンバルジャンの心情描写がわかりすぎるほどわかった。

「あらゆる思想の発点はその帰点と同じく法律に対する憎悪であった。社会に対する、人類に対する、天地万物に対する…ついにはいかなる者たるを問わず、いやしくも生きる者ならばそれを害せんとする漠然たるやむことなき獣性の願望となって現るるものである」

逆恨みがいつしか信条へと変わる様はわかりすぎてつなくなるほどだった。

実はまだ最後まで読んでいない。主人公の転向が見たい気もするが見たくない気もする。そんな風に世の中を許したくない思いが自分の胸にはまだある。