収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2023-01-01から1年間の記事一覧

2022年5月26日

美穂子さんから手紙が届く。 続いて伊藤さんから差し入れも入る。ちくま文庫に新潮新書、文春文庫の解説目録、さらに「波」と「図書」と「鴨東通信」。伊藤さんは、一度の差し入れ3冊の上限を無視して送ってくる。 ギリギリアウトを狙わないとストライクゾー…

2022年5月25日

休養処遇は終わるって聞いたのに、今日から作業はじまらないんだなあ。 石ころひとつさえも持ち出せないし、持ち込めないこの場所は、かつて少年刑務所だったらしい。少子化のあおりをくって収容者となるはぐれ者の対象を少年から成人まで広げたんだろう。 …

2023年5月24日

ここにいれば薬を使わなくていいし、薬を使わないからって発狂するわけじゃない。もう薬中は全員刑務所に入れとけばいいんじゃないか。税金がどうなるかとかなんて知ったこっちゃない。 なんて、いつもの主義主張とぶれぶれな自分が現れる日もある。 まあだ…

2022年5月23日

食器口が突然ガバッと開き「はい薬、5分早いけど」と眠前薬が袋のまま差し出される。ボクは「あっ大丈夫です」と言って手にとる。薬を確認し「間違えありません」と口にする。コップを持つ手がぶれてしまい水がびしゃりとこぼれる。全く大丈夫ではない粗相を…

2022年5月22日

今回の怪我からボクは「体にいい運動ってのは一人でやるものだ」という教訓を得た。つまりは「筋トレに励もう」という機運が高まっている。だが、まだ休養処遇の措置がかかっており、例え休日であろうが9時から5時までは安静にしていなければならない。 「何…

2022年5月21日

こんな夢を見た。 高速バスに乗っている。なぜかトラックとデッドヒート。トラックが白バイに捕まり、バスの運転手は誇った笑みを浮かべている。ボクは運選手のすぐ後ろの席。競う相手は消えたのにバスはぐんぐんスピードを上げていく。急カーブの連続。こん…

2022年5月20日

外は五月晴れ。小鳥が囀る。寝たきりのボクの頭のすぐ向こうの廊下では掃夫がせかせかと働いてきる。 この舎房には、拘置所から来たばかりの者や何かをやらかして調査を受けている者や懲罰中の者、あとはボクのような病人が収容されているようだ。両隣は懲罰…

2022年5月19日

ここに来て一ヶ月が経ちましたが、早速やらかしてしまいました。 工場に配役されてわずか三日目。 他の収容者とやり合ってしまいました。 ブチっとキレてしまいました。 大バトルの末、ぐるぐる巻きに縛られてストレッチャーで運ばれてしまいました。 あー最…

2022年5月18日

姉さん事件です。 アキレス腱を切りました。 それは運動時間中、グランドでリレーをしていて、ボクはアンカーで、1レース目が意外と調子よく走れて、調子に乗りすぎての2レース目のスタートダッシュで…やっちゃいました。 心が体を追い越したのか、気づいた…

2022年5月17日

今日という記念日をどう綴ろう。 きっと今回の収監期間において今日は最も思い出深い一日になることは間違いない。 出来事をそのままに記載することにする。気持ちは…まあ後からでいいや。 いつものように朝起きた。 いつものように工場に出役した。 いつも…

2022年5月16日

とても親切にしてくれる人が背中にがっつりとカラフルな仏様を背負っているのを見て自分の気持ちに整理がつかない。ちょっとした所作、ただくつろいで座っているだけにしてもその姿に凄みを感じる。凄みを与えようと生きてきた者特有の威圧である。ボクと彼…

2022年5月15日

のっぺりとした白い壁。剥落するたびに塗り直されている。それも厚塗り。どんどんと分厚くなっていくこの部屋の壁。どんどんと狭くなっていくこの部屋。独房の減価償却は体積で測れるはず。 トイレの詰まりがひとまずおさまった。便臭が消える。幻臭だったん…

2022年5月14日

昨日手をつけれなかった矯正指導日の提出物をさくっと仕上げる。 「生きる知恵・生きる知識」は、ビートきよしのインタビューだった。このインタビュー…数年前に府中刑務所にいた時に聞いた記憶がある。がんばればどうにかなるという根性論。がんばってどう…

2022年5月13日

強制…もとい矯正指導日。 強制でも矯正でもさして変わるもんでもないだろうが。 部屋で教育のビデオを見ていたら、「診察」と言って呼び出される。外医への受診らしい。 準備された紺色のウインドブレーカー、サンダルへ着替える。 ドアップ、バストアアップ…

2022年5月12日

いつものように訓練工場へ出役する。 運動が終わり、それぞれ食堂へ呼び出され、配役先が申し渡される。 最後に訓練担当がボクに言ってくれたのはこんな言葉だった。 「毎日いろんなやつを見てるとやり直しがききそうなやつとそうでないやつとは大体わかるよ…

2022年5月11日

訓練も最終日。 今日は集大成ともいえる配役審査会だ。 配役審査会と名付けられているが、ボクらに配役する以外の選択肢などなく(しかも、どこの工場に割り振られるかもすでに決まっているはずだ)、とりあえず刑務所的通過儀礼なのであろう。 そこそこの立…

2022年5月10日

朝イチの運動。グランドをぐるぐるを歩きながらアキラとの会話。 「ここにいるとムラムラしないよね」とボクが言う。 「いやー、年代が違いますからね。ムラつくときもありますよ」と返してくるのはアキラ二十代。 きっぱりと線を引かれる。失礼しました。 …

2022年5月9日

訓練も今日を含めてあと三日。 午前中は教誨師でもある住職による坐禅のマイクロティーチング。 意外にもよかった。やったあと体がぽかぽかした。 頭に浮かんだ想念をことごとく捨てて無になる。無我を目指す。 ボクには捨てるほどの財はない。 ボクを生かす…

2022年5月8日

朝の頭が爽やかなうちに「これからのステップ」(訓練期間のワークブック)を仕上げよう。 設問 無力に対して降参することが自由への道です。あなたは、まともではない状態、不安、自尊心の喪失、活力の喪失から自分を解放することができるのです。あなたの…

2022年5月7日

朝起き「また今日も休みかあ」と思える贅沢。 空はぐずついている。ボクの鼻もじゅるじゅるいっている。 訓練生用のワークブックを仕上げようと、机に座る。とたんに土曜の邪念がわく。 前に進め!…ボクはどこに向かっているのだろう。 気をつけ、礼!…ボク…

2022年5月6日

ボクは一人が好きだ。だけど誰かといるのも好きだ。特に育ちが悪く、頭が悪く、精神が不健全、そういう札付き的なムードに魅かれる自分がいる。彼らが集まることで醸し出される空気の匂いというか、色のようなものがいつでもボクにまとわりついてくる。そし…

2022年5月5日

目が覚める。窓の外は闇。そこにあるはずの体育館のシルエットはまだ見えない。 朝日が出るまでは読書はできないので大人しく目を瞑る。きっとまだ四時くらいだろう。すでに8時間は寝ているが、それでも二度寝ができてしまう。眠るために人は起きてるのかも…

2022年5月4日

刑務所における祝日。それはすなわちおやつの日。 今日はクリームオー(オレオのジェネリック)。個包装であるが、箱を開けるとチョコの香りがふわあっと広がる。 朝日とともに目覚め、夕日とともに休む。規則正しい生活スタイルの継続。これが罰になるって…

2022年5月3日

お待たせしました。 手紙を出す相手がいる。ただそれだけの現実を「ボクのことを持ってる」という妄想にまで展開できるのはボクの強みでありまして、なので村崎さんが待ち侘びている姿を想像しながらペンをとっています。 ネタを探し、言葉を紡ぎ、したため…

2022年5月2日

「今」につながる「過去」を見て「未来」を予測する。 「今」の不幸の責任は「過去」の自分にある。 「過去」の自分を貶める「今」の境遇。 「過去」の自分にとってみればこんなのただの巻き添えだよなあ。 ごめんね、「過去」の自分。 いやいや、そんな憐憫…

2022年5月1日

前略 まずはご報告を。えーっと判決は懲役一年8ヶ月でした。 これはというと、求刑2年半に対して七掛け以下の量刑なので(判決の多くが求刑の七〜八掛けになるのが一般的であり)、まあよかった方だと評価できます。 とは言っても一年八ヶ月。つまりは二十…

2022年4月30日

珍しく薬の夢をみる。 引越しの準備をしていたら、業者のお兄さんがやってきて「一緒にキメセクやろうよ」と誘ってきた… 新井薬師の街を散歩していたら一軒屋のドアが突然あいて顔を見せた男が「乱交やるけどどう?」と声をかけられた… デイビゴを飲むと悪夢…

2022年4月29日

今年度の二期生がやってくる。 一週間前に自分たちが教えられたことを全く同じように指導されている様子を横目に見ながら(一期生と二期生は工場の真ん中で区分けられている)、堅強な刑務所のシステムが出来上がっていくプロセスになるほどなとうんうん頷く…

2022年4月28日

1.薬物の危険性や害悪を理解し、薬物使用を断ち切る決意を固める。 2.主体性や責任感を養い、自律的に行動する力を身につける。 3.社会復帰後の就労方針を明確にし、生活設計を具体化する。 この三行が印刷された紙が配られた。ノートに写して置くように…

2022年4月27日

午前中に講義が三つ。所内の職員による「受刑者の手引き」の説明と保護司の役目の話、あとは技官の体験談。 彼らは決して敵ではないんだけれど、具体的に救ってくれるかといえばそうではない。傍観者的味方の距離感。 そんな中でも技官の話は良かった。事故…