収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2023年5月24日

ここにいれば薬を使わなくていいし、薬を使わないからって発狂するわけじゃない。もう薬中は全員刑務所に入れとけばいいんじゃないか。税金がどうなるかとかなんて知ったこっちゃない。

なんて、いつもの主義主張とぶれぶれな自分が現れる日もある。

まあだけど、ボクはボクを罰したがる人を見ると期待通り罰を受けながらも、何がなんでも最後まで突っ張って楽しんでやろうという気になるたちなんだよね。だから無期だって怖くないね。責任としての反省はできるけど、内発的本気の反省は一切無理なんだ。

 

キメた時の妄想が渦巻く。キメた時のことはうまく言語化できるのに、キメるにいたったプロセスについてはどうもうまく言葉にできない。好きで好きで好きすぎて好きだけじゃいられなくなってしまったんだろう。そんなことを考えながら入浴中、体をごしごしと洗っていたら勃起しそうになった。思考感情をすっ飛ばした身体反応。つまりは反射。獣的人間は病人になるしかない。

浴室のすぐそばで燕が鳴いている。燕の巣…刑務所で刑務所に管理されていない珍しい存在だ。

 

13時きっかりにお迎えが来る。受診の準備に取り掛からねば。前回同様ジャージに着替えて写真撮影。手錠に腰縄、車椅子でマイクロバスまで移動。スモークがきっちり貼られてあるので外の景色はきっちり見える。お出かけ日和な青い空。

救急外来から診察室に入る。バイタル測定後、処置フロアへ。刑務官三人の付き添いの明らかにカタギでないオーラがあたりをピリつかせる。見るとはなしに見られている感が居心地を悪くさせる。ボクは左足のギブスに目を落として運ばるるに任す。

今日はギブスを撒き直す処置のみ。手錠を外し、うつ伏せに。この体勢…何がどうなされているのかわからない。ギブスカッターの攻撃的な音と振動に嫌な汗が出る。ギブスがバリっと砕ける音でほっとする。なんだかダイナミックな歯医者のようだ。

いちいちの動作の場面で「ちゃんと支えるので体をあずけて来ていいですよ」と言ってもらえるが、自分に覚悟をつけないと簡単に力を抜いて身を任せることなんてできない。

二週間後、また同じ処置をしたあと、回復具合を見て患部に負荷をかけていく予定との説明を受ける。

処置が終わり起き上がる。周りを見るとスタッフの視線がぱっと散る。手錠をはめてもらう。手錠は囚人としてのアイデンティティ。手錠がある方が周りが安心するのでボクも安心できる。そして無事に帰路につく。

懲罰中の人が多いフロアだが、落ち着いている。この落ち着いた空気の中で一人たるんだ生活を送っているので悪目立ちしていないか不安になる。

 

綺麗になったギブス。可動域を制限することで回復を促す。独房だって一種のギブスだ。早く外れねーかな。

 

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和合亮一/Transtia

コーヒーが飲みたくなりますねえ。美味しいやつが。