外は五月晴れ。小鳥が囀る。寝たきりのボクの頭のすぐ向こうの廊下では掃夫がせかせかと働いてきる。
この舎房には、拘置所から来たばかりの者や何かをやらかして調査を受けている者や懲罰中の者、あとはボクのような病人が収容されているようだ。両隣は懲罰中っぽい。きっと無表情で終日座っているんだろう。
怪我のその後…患部自体は痛くない。患部を庇う周りが痛む。無理させてんなあ。
這いつくばりのひざまづきライフ。床から1メートルしか空気が動いていない。体は動かせぬとも頭の中はカオスだからノート1ページ分くらいは書くことがある。
入浴時には部屋ですっぽんぽんになり、左足の付け根までポリ袋で覆い輪ゴムでしばる。立派な防水ガードだ。全裸のままケンケンで浴室まで移動する。かつてない解放感。舎房の廊下をフルチンで歩く様はあまりにもフィクションじみており羞恥もわかぬ。
入浴後、血の巡りが良くなったせいか、足がじくじくと疼く。でもそれよりもキメセクの妄想が脳を支配しておさまらない。真昼間からオナニーするわけにもいかず、あーしんど。「生きる」=「考える」の毎日。この「考える」が渇望がらみの妄想に支配されるともう逃げ場がない。眠れもしない。時間もいつも通りにしか進まない。底なしの蟻地獄。
数ヶ月の完治する足の怪我の方がアディクションよりもずっと軽傷だと実感する。
6工場の担当が見舞いにあらわれる。「はやく治して戻ってこい」と優しい言葉掛けにうるうるした。
早寝早起きにはじまり、スケジュールは詰まっている。刑務所の生活は暇ではない。もちろん退屈とも違う。かといって充実とは言い難い。漠然とした退屈ってやつなんですかね。