ご無沙汰しています。
お手紙、本の差し入れありがとうございました。
ご存知だと思いますが4月12日に水戸刑務所に移りました。
東京から北上すること100キロ。とはいえ外界との接触はありませんし、特段の感慨はありません。無感動な大移動です。
それに刑務所の独房は大体どこも同じしつらえですし、勝手知ったる態度で過ごしています。(水戸刑務所は、元々少年刑務所だったそうで、その名残のせいか食事がボリューミーなのが他の刑務所とは違うといったら違う特徴らしい)。
ただいま訓練期間真っ最中です。
訓練期間は、作業(洗濯バサミの組み立て)と諸動作トレーニングと講義でみっちりプログラムが組まれています。ゴールデンウィーク明けまでの三週間、ハードな毎日です。
同じ時期に入った7人の同期生と耐えています。
水戸刑務所は類犯刑務所(リピーター専科)ですので海千山千のメンバーの語りには含蓄があり、考えされられることばかりです。
「気をつけ」の姿勢ができないくらいに腰の曲がったある後期高齢受刑者は、教官から「生活保護なんかの制度もあるから出所したら利用するように」と勧められても「いいえ。私は生活保護を受けるつもりはありません」ときっぱり!まるで今日の日付を答えるかのような当たり前の口ぶりで、そこには拒否という感情も信念という意思もなく、その後に続く沈黙には「生活保護を受けるくらいならまた窃盗で捕まった方がマシだ」という言葉が控えていそうで…この絶望のロジックはボクをやるせなくさせます。
生活保護を受ければどうにかなるなんて言うつもりはありませんが、人生、上がるにしろ落ちるにしろリスタートはゼロ(最低限度の生活)からでいいんじゃないかと思ってしまうものですから…
福祉の相談窓口よりも警察や検察の取り調べが選ばれる世界観に支援の文脈で何ができるんだろう。
三週間のすれ違う程度の関係のボクは無力で…それ以前に人の心配をしている場合ではないんですが…職業柄気になってしまいます。
来たばかりですが、すでに出所後に向けての調査がありました。
柄受には稲葉さんの名前を書かせていただきました。
また帰来先は、つくろいのシェルターを申し出たんですが、そちらは認められないとの返答を受けてしまい…シェルターがダメというわけではなく、いくつかあるシェルターのどのシェルターになるのか今のうちからはっきりさせておく必要があるらしいです。事前のリサーチ不足でした。すみません。プランBを考えねば…
お願いするだけの立場、やってもらうだけの間柄、その居心地の悪さ。
あー何か面白いことを言って誰かを笑わかせたい。そして笑いたい。ニュースと言えば海の事故に山の事故。遭難、失踪…ボクも友人からしてみれば急にいなくなってしまった行方不明者です。早く顛末を笑い話にしてしまいたいものです。でもそれはまだ先の話。今はこの境遇に適応していくことを最優先課題として頑張ります。
稲葉さんもお体に気をつけてお過ごしください。
追伸
いま、読みたい本は、稲葉さんと小林さんが書かれたものを何か送ってもらえると嬉しいです。
7月は稲葉さんの誕生月だったような。日付は忘れてしまい申し訳ありませんが、おめでとうございます。皆様の誕生日も知りたいです。特に何ができるわけはないんですが、ここではそういうメモリアルがとても役にたつんです。
素敵で贅沢な本。バードストライクという新語に出会う。ひどく残酷な言葉だけれど。意味合い的にはデッドウォールって方が合ってる気もする。