収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年6月3日

ノートを新調する。

何か縁起のよさげな言葉ではじめたいなあと思うが、そんな都合のいいエピソードなんか起きるはずもなく、とはいえこういった想起は悪いもんじゃやないと思う。

 

トンガ坂文庫さんからの差し入れ本が一気に7冊。富豪になった気分。刑務所で受けた傷は刑務所の外から与えられる余暇で癒されるのです。都合のいいエピソード見っけ!

差し出された手を握る瞬発力のなさが自分の弱さ。今が一番皆が優しくしてくれるとき。心置きなくしっかり噛み締めて読みほそう。

 

今日も県立病院への受診。こんなに塀の中と外を行き来する受刑者もあまりいないだろう。

マイクロバスにて護送。刑務所を出る時には、守衛さんが車両の下までチェックする。

下車時、官物のサンダルの尾が切れる。まったくもって切れやすい足元だ。

診察前に採血六本。今日は整形外科でなく、感染症科の方だ。「こんなにとるのははじめだた」どナースが呟く。

現れたドクターから「その後どうでしたか?」と尋ねられる。ボクは「アキレス腱を切りました」と感染症とは関係のない報告をする。

5月の採血の結果は、CD4は459、ウイルス値は………検出限界未満!!!奴らは壊滅してしまったようだ。

気分がいいので質問してみた。というか少しでも余裕がないと診察中に質問なんてできるもんじゃない。

「(怠薬のせいで耐性がついてしまい)もしウイルスが減ってなかったら、どうなっていたんですか?」

ドクターは「それはわかりません。耐性のつき方によって考えていくことになりますが、かなりややこしいことになるのは間違いないでしょう。正直考えたくないケースですね」と答える。

ボクは「それにしてもこんなにすぐにいなくなっちゃうもんなんですね」と他人事のように尋ねる。

ドクターは「三ヶ月くらい(の断薬)なら、まあ大丈夫でしょう」と余裕綽綽。

「新薬にかえる人はどのタイミングでかえるんですか?」とついでに聞いてみた。

「基本、ウイルスをうまく抑えられている状態であれば、そのまま代えないことを勧めます。そんなに薬剤の選択肢が多い疾患ではないですので、今回のようなこともありますし。とにかく厄介なやつなんですよ、このHIVのウイルスは。ですからちゃんと服用してくださいね」とお決まりの締めにうつる。ボクは「はい。気をつけます」と優等生のように答える。

薬の効果が当たり前に享受できるわけではないことを忘れててはいけない。

 

部屋に戻ったら新宿区から更生医療の書類が届いていた。どうしてボクがここにいることがわかったんだろう。特別発信で更新手続きできるらしいが、まあ今年は必要ないだろうから保留にする。

 

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