朝から誰かが怒鳴られている。どうやら回覧新聞を部屋に隠し持っていたらしい。高齢受刑者なんだろう。呆けたつもりで窮地を凌ごうとしている。たまに耳が遠く聞こえないふりをする者もいるが、追求の手は弱まらない。 刑務官のヒートアップしていく怒号。朝からご苦労様。悲しいかなボクは怒鳴り声の目覚めにも慣れてしまった。
ふわっと心は上の空。目線ははるか空の上。
声の圧力に馴染んでしまう弊害は、他者の説明や説得に聞き耳を持てなくなることだ。気持ちで理解するセンスが壊されてしまう。おそろしい。人として尊厳をもって扱わられない生活を通して人に対しての尊厳なんか身につくはずもなかろう。
罰に学んで暴力が身につく。罰の身体化。ここはそういう場所だ。それは更生には決してなり得ない。
別に全くもって悪いことをしているとは思っていなから更生できなくてもいいが、暴力はいらないなあ。
ジェスミン・ウォード/歌え、葬られぬ者たちよ
スーパーナチュラルな世界っきっとある。きっとじゃなくて確実にある。世界観でなく、世界なんだ。