仮釈を諦めた奴は底が抜けたように荒れるので始末が悪い。気ままに報知器を使い、駄々をこねる。よくない空気が舎房全体に広がる。他人の不幸は辛い。自分のだったらいくらでも笑えるんだけど。
ギブスの中がかゆい。くるぶしの左下とふくらはぎの下あたりがむずい。蛇になったつもりで左足をうねうねさせるが脱皮はしない。人間のまま。かゆい…かゆさに耐える矯正指導日。
ボクは病として薬がやめられないだけでなく、こんな間違った社会に迎合したくないという意志としての断薬拒否思想をもっている。薬をやめることで社会にひれ伏したように見られるのが嫌なんだ。罰が意味のあるという結末に自分の身を置きたくないんだ。
薬を使い続けることは「ボク人権宣言」とも言える。
もちろんこんなこと矯正指導の感想文には書けない。
いつかここを出た後に発信してやろうという思いがこの意地日和を支える一番のモチベーション。
どんなタイトルのものにしよう…
ノードラッグ、ノーライフ
有罪モラトリアム
そんなことばかり考えて矯正指導日を過ごすボクは、報知器をおろしまくるやつとなんら変わらない。ただの覇気のない反社会性人格障害なんじゃないかとも思えてしまう。
別に知らんけど。
上野 善道 他2名/新明解国語辞典 第七版 特装青版
新しい辞書ってたき火のような匂いがする。