収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年6月6日

お元気ですか。

先日はお願いしていた関係者の方々の住所を送っていただきありがとうございました。

大変助かりました。

その後、4月12日に東京拘置所から水戸刑務所に移送され、ゴールデンウィーク明けまでのしばらくは、立派な囚人になるための訓練期間で作業、講義、諸動作トレーニングの集中プログラムの毎日でした。「ももあげろ」「白線踏むな」「指先合わせろ」と怒鳴られる様は、まるでドリフのエンディングのようでした。

最終日には配役審査会という所内の偉い人たち十数人との面談みたいな場が設けられ…

この圧迫面接っぷりが半端なく「同性愛らしいな。妙な真似すんじゃねーぞ、わかってんのか」なんてひどい言われ方もしましたが、なんとか耐え(というか耐えるしか選択肢はないんですが)、無事5月12日から工場に出ることができました。

八王子の時は寝たきりでしたし、府中でも病舎だったのであまり刑務所ならではなダイナニズムを味わう経験をしておらず、緊張の出役でした。

とはいえ行ってみればみたで工場はさほどひどいところではなく、洗濯バサミを作る工場で若い人も結構います。思ったよりもまとも(?)な場所でした。

ただし、そこはボクらしく、ことはうまく運ぶはずもありません。さあ頑張ろうと思った矢先、事件は起きました。事件というか重傷事故ですね。被害者はボク。加害者もボク。内容は左足アキレス腱断裂。

運動時間中、リレーで駆け出した途端、足が抜けたようにうごかなくなり、あえなく退場、搬送、全治三ヶ月の重傷。

体を飛び出そうとした魂にアキレスがNO!を示しました。

誰にもバトンをつなぐことができなかった孤独の証明ともいえる真っ白なギブスがやけに眩しい。

事故当日は自分の体にストップを出せずすぐにタガを外してしまう脳のつくりに腹も立ちましたが、すぐに気を取り直し、次は服部先生を恨みました。「淘汰さんは若い若い」とか言ってその気にさせるからさあ。あれは過信教唆です。

まあいいですが。すぐに「全治ってことは全て治るってこだから、取り返しのつかないほどのことではないのでまっいっか」と重ねて気を取り直せたので…まいっか。ボクは考えることはできても悩むことができないんです。すでに服部先生は赦されているので安心していいですよ。

それにしても、これだけ徹底された管理下において怪我をしてしまうって…ことを起こせるって…どうかしてる。無計画に個性を発揮できてしまう自分ってすごい!

しばらくは部屋で一人きり洗濯バサミを量産する毎日です。魂の洗濯バサミ作り。

窓の外では宿主のいない蜘蛛の巣がたんぽぽの種を絡めて風に揺れています。

今日から夏季処遇。日に2回、冷たい麦茶が支給され、うちわも配られ、作業中もTシャツで過ごすことができるようになりました。ためしにうちわを仰いでみましたがひやっとした風が吹くだけで感動はありません。肌寒い。

まあいいや。いやでも暑い夏は来る。

雨ですねえ。梅雨入りらしいです。………。そもそも晴れの日をそこまで愛してやまないわけでもないですし、雨を厭う理由もない。雨天上等。明日は明日の雨が降る。

さあ明日は診察だ。外の病院へ訳あり裏口診察。手錠と腰縄をつけて(もちろんカモフラージュされているんですが、物々しさは剥き出しなので)あたりの注目を浴びてきます。

全ての事象は意味を持つ。こんな体験もいつか役に立つ…はず。

6月30日は誕生日ですね。服部先生もよいバースデイをお迎えください。

 

 

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奥野克己/モノも石も死者も生きている世界の民から

ちょうどこの本を読んでいた時に、宮沢賢治星野道夫の差し入れがあって、シンクロニシティを実感。