ボクは5月にアキレス腱を切るというアクシデントを起こしまして今月頭までギブス生活でした。(折り合わなさすぎて、ついに切れた)。今も松葉杖を使っています。転ばぬ先の杖ならぬ、転んだ先の杖です。懲役は座っての作業なので(工場で洗濯バサミの組み立てをやってますが)、支障はありません。ただ動作はいちいち時間がかかります。カツカツ進む行進の足音を乱す不協和音。全体主義システムで成り立つ刑務所では足を引っ張る存在です。
「淘汰、お前先に出ろ!」
「淘汰、一番後ろに並べ!」
「淘汰、お前はそっちから行け!」
「淘汰、お前は転ぶから号令に合わせるな!」
「淘汰!」
「淘汰!」
部屋も一人だけ一階の独房の特別待遇。刑務官も怪我をした途端に優しくしてくれるし。
変なの。………。変でもないか。
特別待遇って浮くんですよね。なんだか縁起の悪いやつだと思われているせいか(まあ、元来の性格もあるのでしょうが)いつもほぼ一人です。障害者がヤンキーのメンバーに入れない理由がわかった。ヤンキーにはいつだって疾走感が必要なんです。
ああ風を浴びて走りてーーー!
(続く)
トマス・ピンチョン/競売ナンバー49の叫び
絵画を見るように読んだ。もしかしたら絵画は、読み物なのかもしれない。