朝が来るのがあんなに嫌だったのが嘘のようなおだやかな目覚め。
ゆるり眠れるからゆるり起きられる。
当たり前のことであるが、これがなかなか難しい。
前のときはどうだったっけ?
6年前…あまり覚えてない。
前回は保釈中にHIVだとわかって、未治療のまま収監されたから。収監されはしたものの、寝たきりといっても差し支えない重病人だったから。
拘置所の血液検査の結果、CD4(免疫値)は二桁。いつエイズが発症してもおかしくない状態。拘置所の独房にはネットがない。自分の病状を調べることもできず、その数値が示す危険な現実をあの頃のボクは一切知らなかった。
好き放題に繁殖し続けるウイルスのおかげで夜中の体調不良…苦手だった報知器を使って宿直医に救急対応させてしまったっけ。階段の登り降りもとにかくしんどくって、一階上がるだけがそれはそれは果てしない旅だった。
「治療を希望するか?」とアホな質問してくる刑務官にボクは「お願いしたいです」とへりぐだって答える。あの時「いいえ、どうぞお構いなく」と答えていたらどうなっていたのだろう。
どこの刑務所に行くかの選択肢はなかった。分類の担当から「お前は医療(刑務所)だ」とはっきり告げられたから。そこでようやくボクはボクの体がやばい状況であることを察した。
思えば遠くへ来たもんだ。
今回は2日目から、快食快眠快便。
笑ってしまうくらいに強くなってしまった。
中島らも/あの子は石ころ
なっ!なっ!オレなんてまだまだだろう?って友人に勧めたい。こういうユーモアはどうやったら手に入るんだろう。