中途覚醒ごとに昨日の連行の場面が頭に浮かぶ。
浅い眠りの終わり頃、地震で目覚める。こんな不愉快な気分のままで死ぬのはやだなあ。絶対に嫌だ。
ボクは鼻先にナイフを突きつけられないと命への恐怖を実感できないタイプの人間だったようだ。
気分を変えたくて大きく深呼吸。
繰り返し繰り返す。繰り返し繰り返す。
深呼吸で息してるみたいだ。
大きく息を吸い込むうちにボク自身がそのうち刑務所になってしまいそうな気になる。
今日の作業中、安藤くんが連行されて行く。スリッパをペタペタ音を立てて歩いてたらしい。
これでもかというほどの罵倒を受けている。聞くに耐えない。
ボクはフラッシュバックを起こさないように無関心で五感(および六感を)ガードする。
担当がコロナで不在になってから4日で二人が連行され、二人があがっていった。注意の回数も明らかに増えている。殺伐としていく工場。
ああ、なんて壊れやすいんだろう。徹底された管理社会は暴力によってのみ成し遂げられると思っていたがそうでもないらしい。
受刑者が変化に弱いせいではない。刑務官が変化に弱いせいでもない。
刑務所という場所が変化に弱いからだ。
ミン・ジン・リー/パチンコ 下巻
上巻はすらすらいった。下巻のある場面でボー然となり、そこから一気にペースダウン。はー、引きづる衝撃。
日本をよくいうセリフには「そんなに甘やかされても」と受け入れがたく、非難されると「そんなこと言われても困る」とアンビバレントですね。