廊下のエアコンが稼働し始めたのはいいけれど、冷えすぎて鼻水がジュルジュルする。外は雷がゴロゴロ、隣の部屋は報知器がガシャガシャ。濁音に囲まれた土曜になりそうだ。
どういう文脈から発せられたのかは想像できないが、遠くから「俺は受刑者だぞお」と叫ぶ若いのがいる。それに呼応するように別の部屋から「俺もだーー!」と聞こえる。見習うべき自己主張。それぞれが暇つぶしという目的への手段をお互いの中に見出している。
土曜と日曜、何もしていないと死んで行くような気分になる。自分がどんどん損なわれているような怖さ。そんな怖さごと全てを手放し、失くしてしまうのも良いかもと思うが、どうしてもそれができない。ギリギリの煩悩。
何が気に入らないのか、毎回シチューをぶちまける輩がいる。昭和の親父じゃあるまいし…もちろん連行されて隔離処遇。いつものこと、毎度お騒がせします。後片付けを手伝うからボクにもういっぱいのシチューをおかわりくれないだろうか。
彼は懲罰の上限を超えてタガが外れている。
ボクは気づく。仮釈のない刑務所ってすごいことになるであろうということに。
みんな反省してるからしおらしくしているんじゃない。一日でも早く出たいから。ただそれだけ。そう考えると刑務所の役割って一体なんなんだろう。
バッジュ・シャーム作・絵;ギーター・ヴォルフ文/世界のはじまり
見るからに贅沢なしつらえで、クリスマスに読もうとまだ開けていない。