収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年7月12日

浴室まで連れて行ってくれる刑務官からウルトラマリンの香りが漂っている。三島由紀夫的刑務所の世界観にはミスマッチな…いやいや体育会系にはウルトラマリンがあっているのかもしれない。知らんけど。

運動は一人がいいか、複数がいいかと聞いてもらえるも、そんなの一緒になる相手次第だからなあ。「どっちでもいいです」と答えておく。結局今日も単独運動になった。動くたびに包帯がはらりとほどける。包帯を巻き直してもらうためにも医務願箋を出さなければいけない。

回診後、病棟に行く。刑務医官が「私も昔アキレス腱をやったことがあって、回復しかけの今が一番怖いんだよなあ」と静かに語りながら包帯をセットしてくれる。ぐっと気持ちの距離が近づく。依存症の「私もそうでした」にはさっぱり共感性を覚えないのに不思議だ。

足を傷めてからというもの自分の足を見る機会がえらく多くなった。足にボトックス注射を打つなんてどうしてなんだろうって思っていたが、足も歳をとることを知る。陰影のついた膝に老いが消えてはあらわれる。

いい天気だが布団干しがされていない。午後になって、中庭の草刈りが始まってその理由がわかった。土埃の布団で寝させないための配慮だったようだ。

通常の昼食に非常時用のアルファ米がプラスされている。賞味期限が迫っているから処分がわりに施されているだけだろう。それでも満腹になるからありがたい。

遠くらか怒鳴り散らすいつもの刑務官の声が聞こえる。作業への集中を妨げる放射能的ドラ声。近所迷惑だ。

 

 

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姫野カオルコ/彼女は頭が悪いから

失敗そのものよりも失敗に気づけないことの不気味さ。最後に彼女が提示した条件は誰が思いついたのだろう。彼女のキャラではないような気がしたんだが。