目が覚めたら枕元に何やら蠢く物体が。
!!!
裸眼で凝視する。正体は3センチほどのクモだった。蜘蛛との添い寝。
ゴキブリじゃないから安心して二度寝する。
木枯らし一号に震えながらの出役。
ボク「ああああ、生まれる国を間違った」
中島くん「どこならよかったですか?」
ボク「オランダ!」
中島くん「オランダだってシャブはダメでしょう」
佐藤さん「だいたいシャブが合法の国なんてあんの?」
ボク「あるよ」
佐藤さん「どこよ?」
ボク「歌舞伎町!!!」
大爆笑。くだらなさすぎることでも笑えるのは刑務所のいいところ。
水をさすように担当台に呼び出され、発信の許可が降りなかったとの告知を受ける。トンガ坂へ送った手紙の住所が間違っていたらしい。眠剤を飲んで書く文章はマジでやばい。意味のわからないミスが起きる。
中島くんが「何書いたんですか?」と聞いてくるから「住所の番地を間違った」と答える。「昔、マスターベーション気持ちいいって書いて検閲通らなかったやつがいたから、淘汰さんもそういうタイプかと思いました」と中島くんはなんだか残念そう。キメセクしたいとかを手紙に書くこともあるから、そいつとボクとに大きな差はない。ボクは検閲ラインの結構ギリギリのところを攻めているんだと思う。これは言葉による司法への挑戦だ。
トンガ坂文庫から毎週届く本は、足元を見つめされるものが多い。自分で選ぶやつは上へ未来へと地に足つかないものばかりになってしまいがちだから、とてもありがたい。誰かに本を選んでもらうってとても贅沢なんだ。
担当から「お母さんから来てるぞ」と手紙を受け渡される。
母からなんか来るはずないのになあと部屋で開封すると伊藤さんからだった。毎週のように手紙を書いてくれる伊藤さん。
伊藤さーーん、伊藤さんボクのママだって思われてますよ。
17時40分にぐらぐらと部屋が軋む。足元をでかい蛇が通るような不吉な揺れ。テレビをつけたらひたちなかは震度5らしい。直後、隣の部屋から報知器が落ちる。「なんだ?」と駆けつける刑務官。切迫感を破って聞こえたのは「おむつお願いします」という爺さんの訴え。なんだかほっこりしてしまった。
下世話から神話まで、その振り幅にくらくら気持ちよかった。ただ面白いってだけで終わらせないことによる世界の広がりを中沢新一の本は教えてくれる。
これもトンガ坂さんからの選書。