収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年7月9日

音のない雨が降っている。涼しい風が部屋を吹き抜けていく。窓の外の蓮華にしがみつく水玉がきらり光る。

今朝も地震で目が覚めた。正しくは地震が来そうな予感がして起きた。ボクの中にも野性がまだ存在するようだ。

木曜も昼過ぎになると肩の凝りがバキバキと辛い。だけど報奨金が先月より一気に倍増し、少しだけ頑張ろうという気分になる。

刑務官の目を盗んで、ぐっぐっーーっと体を伸ばす。伸びていく感覚がわかりすぎて怖い。ストレッチで体が散り散りになりそうだ。

職場宛に手紙を書きたくて親族外申告追加願を提出する。住所、氏名、関係、そして理由。…………。手紙を書く理由ってなんて書けばいいんだろう。寂しいから?忘れてほしくないから?暇だから?結局、「出所後の生活相談」という言葉に落ち着く。

職場への手紙を書きながら仕事について考える。ボクのやっている支援という仕事はやっぱり商売とは違う。自分のお気に入りのものを誰かに「これいいっすよ」と勧めるでわけではないから。「このお薬、よく効くんでぜひ試してみませんか」と瞳をキラキラと輝かせながら紹介することはできない。

「どうしてそんなに優しくできるんですか」と福祉職をしているというだけで聞かれることがあるが、ボクだって刑務官を見ていて「どうしてそんなに躊躇なく大声で誰かを怒鳴りつけることができるんだろう」と思ってしまう。ボクの患者さんへの笑顔も刑務官の受刑者への罵声も大きく変わるものではないのだろう。

 

 

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森田真生/数学する身体

ボクが天才かもと思ってしまう人(独断と偏見による)はいつもどこかが、さかなクンっぽい。