収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年5月30日

自弁購入品が支給される。

ちり紙2パック、黒のボールペン、便箋にノート、ウテナクリーム、箸に箸箱。

やっぱり自弁の箸は使いやすい。飯もうまく感じる。

ボディーソープは3類にならないと使えないらしく廃棄となり352円が無駄になる。ひと月の報奨金に匹敵する額…痛恨の極みだ。しかも、「よく注意するようにと指導まで受けてしまう始末。

 

今日も洗濯バサミを組み立てる一日が始まる。世間では囚人にホタテの殻向きの仕事を斡旋する話があるらしい。合理的価値世界へ向けて舵を切られる刑務所という名のついた年季のはいった古き重き方舟。アホだな、法務省は。そんな小手先の成果なんかを目指すくらいなら、宗教とか哲学の達人の育成に労を惜しんだ方が断然マシだろう(とボクは思う)。

なんか同じことを数日前に日記に書いた気もするが、ここのところ記憶がおぼつかない。

 

屋外運動。一人きりでのコンクリートの鶏小屋。100回の腕立ての後は松葉杖でぐるぐると歩く。汗だくになる。片足ないだけでこんなに歩くのが大変だなんて…とにかくきつい。きついということはどこかが鍛えられている証拠だ。ただひたすら歩き続ける。「強くなれ」「強くなれ」誰にも聞こえないように呟きながら。五体満足って体に優しい動きを保証していることだと今さらに気づく。

運動後、「いい汗かいてんなあ。わかってると思うけど無理に動き続けなくてもいいだぞ」と刑務官から忠告を受ける。「わかってると思うけど」という言葉には「もしかしたらわかってないかも、こいつ」というアセスメントが含まれているはずだ。はたからは尋常ではないムードが漂っていたんだろう。手の平には松葉杖を握りしめすぎたせいでできた水ぶくれができている。やりすぎの証拠だ。

ボクは痛まないと気づけない。

 

 

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山本貴光/世界を読み解く化学本

刑務所にいるとどうしてだか、宇宙とか進化とかに意識が向きがちになる。メタを極めるには最良の時間空間なんだろう。