収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年4月16日

拝啓

お元気ですか。連絡が遅くなり申し訳ありません。

月に4通、それも決まった曜日にだけ一回に二通づつという通信制限があってサクサク手紙が出せないんですよね。

もうお聞きになっているかと思いますが改めてご報告を。

懲役一年八ヶ月でした。

弁護士の先生との打ち合わせでは「一年十ヶ月でお願いしたい」とをこちらから具体的に提示しようかなんて案もあったんですが…言わなくてよかった。一部猶予は求めませんでした。出所後、数年間に渡り、月に数回も平日の昼間、観察所での教育や保護司との面談に時間をとられ、スケジュール調整し続けるのは億劫ですしね(一部猶予法は再犯防止のためというよりも罰としての効果の方が強い気がします)。

でもって4月12日に水戸刑務所に移送されました。

今は雨が降っていて少し寒いです。ここでは太陽の光よりもまだ風の冷たさが勝っているようです。メリアスを着込んでしのいでいます。

いかがお過ごしですか。

ボクは自分が病人であるということを忘れるくらいには元気です。

拘置所での血液検査ではCD4が486と観測史上最高の記録を計測して、ウイルス量は8万コピー。こちらも初発時とタイ記録。ドクターは「ずっと検出限界未満だったのにおかしいなあ」と首を傾げていましたが当然と言ったら当然なんです。

新宿署に捕まってからずっと薬飲んでなかったんで…

あの時は心の底から警視庁に対して腹を立てていて、そんな相手からの施しなんかもらえるかと幼稚な反抗心でもってトイレでペッと吐き出していました。

そんなきっかけでしたが、留置所でこれまでの人生とか生き方とかを考えているうちに、ちゃんと生きたいと思えるまで、この生きるための薬をやめてみようと思った次第です。以来断薬をしておりました。

体は正直です。6年間の治療の成果が3ヶ月で元に戻る。

この結果を目の当たりにし、ボクは怖いと思いました。思えたというべきかもしれません。

「まだ死にたくない」と根性なしのあっけない転向。日和見体質がいい風に出たようです。

今は毎朝、命を噛みしめるように服薬しています。

生きる意味も人生の価値もわからないままですが、生きるための努力をしようと。今は生きることに興味があります。

今後の相談業務に活かせるかしら。「薬飲み忘れたけど発症しませんか?」という相談に「スパッとやめてたんだったら平気平気」と実体験に基づいた助言をいつかできる日を夢見ています。

IKSMさんには本当に感謝しています。そのフットワークの軽さも「2年なんてあっという間」と言ってくれた言葉もいつか自分が誰かにやってあげたいモデルです。

やってもらえたことを誰かにやってあげれる人生にしていければと思っています。

なんだか物騒なニュースが続いていますが、体に気をつけてお過ごしください。

皆様にもよろしくお伝えくださいね。では。

 

 

f:id:cubu:20230926233910j:image

坂上香/プリズン・サークル

輪を乱すどころか、刑務所では輪になってはいけない。くだらんルールだ。

この本、どれだけの刑務官が読んでいるんだろう。