手持ち無沙汰を持て余す。理不尽に浮かぶボクは滑稽な息継ぎであっぷあっぷしている。
横になrり、呆けた目つきで天井を眺める姿のどこまでが諦めでどこからが慣れによるものかは、どんな熟練の刑務官だって見極めはできないはずだ。
ゆるくぬるい午睡。
夢をみる。
取り調べの場面。
「どうして関係のない家族のことまで聞いてくるのか」「どうして手の内を明かさずに介入してくるのか」。
イライラする。
日曜なのに。夢なのに。
嫌な思い出を思い出すことは、トラウマに餌をやるようなもんだ。思い出すたびにじわじわ成長していく。だからそういうやな記憶は飢えさせて干からびさせるに限る。忘れてしまえばいい。
悪夢の後の体は重い。水飴の川を泳ぐみたいに手足を取られて思うように動かない。
冷えた体。新聞によれば気温は25度のはずだ。ラジオのDJもみないい天気だと言っている。確かに明るく、すりガラス越しの空も青い。
なのにどうしてかこの部屋はうすら寒い。壁のせいだ。この冷たくて硬くて色のない壁のせいだ。ボクは壁を睨む。ひどく毛玉のついた官物の靴下(もう毛玉でできた靴下といってもいいほど)で指先の冷えをしのぐ。
要するにここは愛のない場所なんだな。
そしてつまり今ボクが求めているものこそが、愛というわけである。
姫野カオルコ/彼女は頭が悪いから
失敗そのものもエグいが、その失敗に最後まで気づけない男ども(とその家族)の気味悪さ。
最後に彼女の出した和解の条件はいったい誰が思いついたのだろう。