収監ダイアリー

虚栄心、自己治療、責務、手段、自己実現。晒す限りは活かしたい。

2022年6月11日

目が覚める。朝の白い光に体が馴染むのを待つ。眩しくて目が痛い。目を瞑り夢の世界へ戻る。

再び目覚める。さっきよりも強い光が瞼をさす。

鳥がはしゃぐ声が聞こえる。朝の澄んだ空気は音を通しやすい。

思いも朝は届きやすいのかな。誰かを思おうと試みるが、塀の外の人たちだって朝っぱらから想いを込められても迷惑だろう。すぐに止める。

頭は覚めても体は追いつかない。動かない。

夢…夢を見ていた。はずだ。が思い出せない。わかりやすいストーリーだったのになあ。思い出せない。まあいい。しょせん夢なんだから。

枕元に置いていた本を手に取る。湯呑みにためていた水を飲む。100ページくらいは進む。

ピンポーンと放送がなる。続いて運動会の徒競走のBGMが流れる。

奥の部屋から順次、検温のため食器口が開けられていく。非接触の体温計が示すのは「36.4」。

敷布団、掛け布団、毛布2枚、シーツを決められたたたみ方で指定の位置に揃える。その上に387の称呼番号が記入された枕カバーを見える様にして重ね置く。グレーと黒の縦縞模様のパジャマをボタンを止めた状態でハンガーにかける。

シンクで顔を洗い、ミルククリームで保湿。唯一の肌ケア。

顔荒でびしょびしょになってしまったシンクの床を雑巾でふく。ついでにトイレを流す。

箸箱を小机に準備し本を片付け、点検準備の号令がかかるまで歯磨きをする。

点検準備の号令がかけられ、点検準備をする。

点検の号令がかけられ、点検を受ける。

配食の号令がかけられ、配食を待つ。そして慌ただしく朝食をくらう。

から下げ終了後、しばらく経って朝食後薬を受け取り服用。

以上で刑務所の土曜の朝は終わる。

 

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大前栗生/岩とからあげをまちがえる

100話あるから一日1話で3か月はもつな、そう思って読みはじめたら一気に最後までいった。しゅるしゅると駆け回るネズミ花火みたいなスパーク感。